高校野球の投げ過ぎと夢と諦める者。

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もうすぐ夏の甲子園大会が始まります。今回は96回大会。

甲子園といえば「怪物」がたくさん生まれた場所でもあります。 横浜高校の松坂大輔とか、駒大苫小牧の田中将大とか。

プロでも圧倒的な成績を残してメジャーにその活躍の場を求めましたが、待っていたのは「ケガ」。 二人とも「肘の靭帯を切る」という大ケガです。 松坂投手はいわゆる「トミージョン手術」を行って1年のリハビリを経て今はメッツで投げています。 田中投手は今は別の治療をしていますが、手術する可能性があると言われています。

田中将大の故障は投げすぎ? 高校野球も調査実施へ - エンタメ - 47NEWS(よんななニュース)

海を渡った日本投手のうち、他にも和田毅や藤川球児といった日本で抜群の成績を残した投手がトミージョン手術を受けています。 和田投手はつい先日、メジャー初勝利を飾りましたね!

で、何故怪物たちはケガするのかというと、**「高校時代の投げすぎ」**が原因だとよく言われます。 また、現在メジャーで活躍している黒田投手や上原投手は高校時代はエースでもなかったことがこの説が有力であることに拍車をかけています。

ダルビッシュ投手も高校野球の投げすぎに対して一石を投じていました。

MLBに一石を投じた「ダルビッシュ発言」の意義|集英社のスポーツ総合雑誌 スポルティーバ 公式サイト web Sportiva|MLB

ここにきて「自分でなんとかしよう」という投手も出てきました。 今回はその投手の紹介をしたいと思います。

大和広陵高校の広田投手

以下、引用はこの記事からしてます。 野球の栄光求める父子の挑戦 - WSJ

この広田投手の父は、プロ野球選手になるという夢、高校時代の投げ過ぎで肩を潰してしまい断念せざるを得なくなりました。 その夢を継いだ広田投手の取り組みはこうです。

立田親子は意外な取り組みで挑んでいる。そこには、立田投手が父親のようにけがをし、投げられなくなるようなことがあってはならないという信念がある。過度の投球や自分の肩に不安を感じた場合、父親の助言を得て投げないようにしているのだ。

肩を潰してしまった父は、立田投手に対して投げ込みの制限を行います。 高校も、甲子園の近い私立の強豪校ではなく、地元の大和広陵高校に進学しました。 それは選手の自主性を重んじる学校であり、私立の強豪校であれば「強制的に投げさせられる」という不安もあったからです。

しかし、投げ込みの制限をしているため、前日に投げすぎた場合は次の日に登板しないこともしばしば。

立田投手は準備不足、そしてなにより今大会で自分のピッチングを見せない方が、夏の予選で対戦したときに有利になると主張し、登板を拒否した。 立田投手の代わりに投げたのは、比較的経験のない2年生投手だった。智弁学園一の強打者、岡本和真選手が第1打席でホームランを放った。大和広陵は7-0でコールド負けを喫した。2年生投手の目には涙があった。

 その試合を見ていたスカウトたちは、立田投手のやる気を疑問視した。

 立田投手に興味を持っているあるスカウトは「言えるのは残念、ただ残念だということ」と言った。「彼の気持ちや闘争心の部分も気になる。全国屈指のスラッガーと対決してみたくないのだろうか」。

高校野球には美徳があります。 それは**「正々堂々と立ち向かう」「卑怯な手は使わない」**っていうこと。

2013年夏の甲子園でも「カット打法」をした選手が非難の的となりました。 リンク:花巻東の156cm、千葉選手から考える「正々堂々とは何だろう?」というお話 | TRAVELING

立田投手が夢である「プロ」に向かって邁進するため、登板を拒否するのは悪くはない。 でも、それがスカウトにとって「闘争心が足りない」と捉えられてしまっている。 それでも夢に向かって自分を曲げない立田投手を僕はすごいと思います。

そして…

高校で野球を辞める人にとってはどうなのか

甲子園 立田投手のように先がある選手はいいかもしれない。 けれどここで僕が思うのは、「高校で野球を辞めなければならない選手はどうなる?」っていうこと。 事情で野球を続けることが出来ない選手だってもちろんいるはずです。例えば親の跡を継がないといけない、とか。

もちろん立田投手に頼るだけではよくないと思いますが、「もし立田投手が登板していたら抑えられたんじゃないか?」っていう後悔が出てくるはず。そして夏の大会でその後悔は即引退に繋がります。 その後悔はその先にも残っていきます。

その部分が立田投手にとってすごく難しいよなって思っていて、3年間一緒にチームとしてやってくればそのチームに愛情が湧きます。 「その人のためにも」っていう想いが出てきても普通なわけです。 高校野球をやっている人は全員がプロに向かっているわけでもないですから、そこを「オレ、プロに行くから今日投げへんねん」ってエースに言われると…。 それでも前に進んできた大和広陵高校はすごいと思います。

最近になって、今後数週間の重みが立田投手の身に染みてきている。活躍すればスカウトの評価がかなり良くなることは分かっている。そのために立田投手は、再び智辯学園と対戦するかもしれない県大会ではいつもより多く登板することも考えていると話した。

 腕をケガから守るために父親と共にあらゆることをやってきたが、将来の展望が開けるのであれば毎試合投げるかもしれない、と立田投手は言う。

 彼はできるならそれは避けたいと語る。しかし、大和広陵が県大会を勝ち抜けば、8月の甲子園大会に進む。プロになるという大きな賭けには、連投も厭わないというこの日本式のやり方しかないかもしれない。

 ある日の午後、彼がこれまでの青春をかけてきたグラウンドを前に、ベンチに腰かけた立田投手が言った。「最終的に自分がプロにならないと意味がない。今までやってきたことが何のためかわからなくなってしまう」。

夏の大会では準決勝で智弁学園に敗れてしまいましたが、立田投手はこの先どうなるのか。 気になるところです。

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おあとがよろしいようで。