花巻東の156cm、千葉選手から考える「正々堂々とは何だろう?」というお話
2013年の高校野球もいよいよ大詰め。 決勝は群馬・前橋育英と宮崎・延岡学園の一戦です。
と、もちろん決勝は気になるんですが、準決勝で延岡学園に敗れた花巻東に気になる選手がいます。
それがタイトルにも書いてるセンターを守る千葉選手です。
花巻東の千葉選手は156cmのセンター。小さい体を活かすため、ツーストライクに追い込まれると、更に構えを小さくして打てないボールはカットして、 甘い球が来るのを待つか、四球を選ぶかという打ち方をしています。
しかし、こんな記事がありました。
“カット打法”に審判部が待った 花巻東・千葉「自分の野球できなかった」 (産経新聞) - Yahoo!ニュース
意図的にカット(相手投手に球数を投げさせるためにファールをうつ)しているのは、スリーバント失敗と見なすよ、ということです。 この点については後でちょっと細かく書きます。
このニュースには「高校野球」ならではの伝統とか、色んなものが含まれているなーと感じました。
特別規則が存在する高校野球
まずは千葉選手がどんな打法をしているか、実際に動画をご覧ください。
見てもらえればわかりますが、ツーストライクからは意図的にカットを狙っています。
プロ野球ではどうともないのですが、実は高校野球では「特別規則」が存在しています。
17.バントの定義
バントとは、バットをスイングしないで、内野をゆるく転がるように意識的にミートした打球である。自分の好む投球を待つために、打者が意識的にファウルにするような、いわゆる“カット打法”は、そのときの打者の動作(バットをスイングしたか否か)により、審判員がバントと判断する場合もある。
via:高校野球特別規則|憲章&規定|公益財団法人日本高等学校野球連盟
わざとカットするのはバントと見なされて、「ツーストライクでバント失敗(ファールゾーンに転がる)するとアウト」というスリーバント失敗にするよ、という規則のようです。
この規則には、あくまで僕の推測ではありますが**「高校生なんだから正々堂々と勝負しなさいよ!」**というのが含まれているのでしょう。
高校野球には色んな伝統がありますよね。 過密日程の中ピッチャーが150球を超えても完投するとか。 絶対間に合わないゴロでも最後のバッターはヘッドスライディングするとか。(駆け抜けた方が早いらしいけど)
ピッチャーの球数については、今年の春の選抜で愛媛・済美の安楽投手が投げに投げてアメリカでも話題になりました。
夏の甲子園はアメリカでも注目されている ー連投の済美・安楽を通じて知らされる甲子園の伝統ー (THE PAGE) - Yahoo!ニュース
アメリカでは「肩は消耗品」という考えが浸透しているので、春の選抜で安楽投手が投げた「772球」は馬鹿げている、潰れるだけだ、ということです。
確かにアメリカの「肩は消耗品」という考え方もわかります。将来がある才能ある投手を、こんなところで潰したくないですよね。 ちなみにあの松坂投手だって高校時代、そして西武時代に投げすぎたから今、急激に衰えたのではないか、と言われています。
おっと、なかなか話がそれました。
本題に戻ると、高校野球は色んな伝統にも縛られています。
正々堂々という魔力
プロ野球のオールスターで、藤川投手がカブレラや小笠原といった強打者に対してストレートの握りを見せてストレート真っ向勝負で三振を取る姿には魂が震えます。そしてそれに全力フルスイングで応える二人にも。動画あります。
高校野球にも「そういうところ」を求めている節がありますよね。 もちろん僕だってそういうところが好きで毎年よくわからないチームであってもお盆は見てますし。 やはり燃え尽きた後の高校球児の涙にはグッとくるものがあります。
だから、カットマンはよくないぞ、というのが高野連の言いたいことなのでしょうか。
真っ直ぐとフルスイングで立ち向かって、ピッチャーは毎試合完投して、バッターはボテボテの当たりでもヘッドスライディングして、感動を与えるのが高校野球だぞ、と。
でも、今や西武のエースになりつつある菊池雄星投手や、日ハムで二刀流で結果を出している大谷投手を輩出した花巻東高校です。 甲子園常連高です、部員数も3桁に届くぐらいはいるはず。
その中で、156cmという身長を活かして自分の活きる道を見つけてスタメンを勝ち取った男がいるのです。
そのスタイルを全て無にしてしまうのってどうなんでしょう。
千葉選手の「真っ直ぐ、フルスイング」に値するのが「カットすること」であったりするのではないでしょうか。
伝統と感動。 高校球児はその道具にされている感じが見え隠れするこのニュースだな、と思いました。
自分たちの勝利のために野球をしているはず、あるいは頂点に立てば高校球児の中で一番最後まで試合が出来るから、そのためとか。 彼らは僕らに感動を与える為に野球をしているわけではないはずです。
色んな役割を持った選手がいますよね。キャプテンでもベンチのチームがあったり、ムードメーカーのサードコーチャーがいたり。 その中にピッチャーにいっぱい球数を投げさせて後ろのバッターに球種を見せる選手がいたっていいはずです。
それでも…
と、こういうことを書いてきましたが、このニュースを見たときの僕の最初に思ったことが「それって卑怯な手を使うなぁ」でした。 改めて考えると今まで書いてきたように思ったのですが・・・ ってか今頃言うなってのもあります。県予選から言われててもおかしくないはずです。
やっぱり伝統って良いところもあれば悪いところもあるのかな、と。
例えば本田圭祐選手がビッグマウスを言ったとしても、日本人には「不言実行」の美が根付いているので、「アイツは何を言ってんねん」って思ってしまうんですよね。
千葉選手には、今のスタイルを崩さずにやっていってほしいな、と思います。 お疲れ様でした。
まぁあからさまなサイン盗みはやめた方が良いと思うけどw 花巻東の“サイン盗み疑惑”を検証 (東スポWeb) - Yahoo!ニュース
おあとがよろしいようで。